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南相馬の自治会が自力で詳細な放射線量地図
 
 
南相馬市の住民自治組織「太田地区災害復興会議」が作った地区内の線量地図=日下部聡撮影

 東京電力福島第1原発に近い福島県南相馬市の自治会が、地区内外の人的ネットワークを駆使し、政府作製のものより細かい200メートルごとの線量地図を作った。「行政ばかりに頼ってはいられない」と道路の除染も実施。普通の暮らしを取り戻そうという切実な思いが、住民たちを突き動かした。

 南相馬市の農村地域にある原町区太田地区は13区に分かれており、南側の一部は原発事故の警戒区域(半径20キロ圏)内だ。それ以外の場所も緊急時避難準備区域になっており、子供のいる家庭を中心に避難している人も少なくない。

 区長会を中心に小中学校PTA、老人会、消防団などの世話役約40人が集まって「太田地区災害復興会議」を結成したのは7月1日。「できることから自分たちでやろうということになった。行政に文句を言っているだけでは、何も進まないですから」と、会長の渡部紀佐夫さん(70)=農業=は言う。

 専門家を招いて放射線の性質や測定器の使い方、除染の方法などを学ぶ講習会を開き、地区内を200メートル四方の網目(メッシュ)に区切った線量地図を作製することを決めた。

 7月13〜30日、住民2〜3人が1組となって計470カ所を回った。GPS(全地球測位システム)と4台の測定器を使い、地点ごとに地面から1センチと1メートルの高さで線量を正確に測った。

 地図は今月2日に完成。政府が警戒区域と計画的避難区域で作製した最も詳細な地図(500メートルメッシュ)より倍以上細かい。地区内は毎時0.25〜4.62マイクロシーベルトだったが、西側の山林以外は比較的低いことが分かった。地図は15日に地区内の全1000世帯に配った。今後も継続的に測定していくという。

 8月28日には自治会のメンバー90人が参加して地区内の主要道の歩道約800メートルの除染も行った。

 測定器や除染用の高圧洗浄機は上限50万円とされている市の補助を活用した。線量測定の指導やデータの地図化は、地区選出の市議(54)の親類のつてで東京の研究機関や業者が無償で協力してくれた。

 もともと太田地区は地域の結びつきが強い。だが、原発事故で子供の姿が消えてしまった。小中学校は休校したままだ。

 「実にわびしいもんだね。とにかく元通りの生活を取り戻したい。それだけですよ」と渡部さん。「国は54基もの原発を造っておいて、万一の時の対策はゼロだったということが、よく分かった」と話した。【日下部聡】

毎日新聞 2011年9月17日 12時03分(最終更新 9月17日 13時23分)

author:イージーライダー, category:福島・原発事故, 11:59
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